本展は、デジタル自然の中での空虚性を精緻に捉え、縄文時代と現代の計算機科学の接点で展開します。新作の“有機的な変形ミラー”とLEDによる“ヌルのインスタレーション”が相互に影響を与える合わせ鏡となることで、物質と非物質、デジタルと有機的、現実と非現実の狭間で新しい共鳴が生まれます。
縄文時代の人々が探求した自然との調和と一体化の理念は、現代の計算機自然において再発見されます。空即是色色即是空の哲学が、この独特なメディアの交錯によってデジタルの“ヌル”として具現化されるのです。“有機的な変形ミラー”は、物質世界の柔軟性と流動性を反映し、縄文時代の遺伝子への探求と計算機自然との対話を促します。一方、LEDによる“ヌルのインスタレーション”は、デジタル自然の厳密な論理性と無常性を表現します。
このような対話と共鳴は、人類が進歩しない、あるいは絶滅するという失望を超越し、計算機自然の新しい喜び、悲しみ、そして涅槃を日常に実現する可能性を内包します。それは新しい自然の実装であり、遊牧民のように定住しながらも共有可能なコモンズを生成します。これは、人類が絶滅する前に、新人類としての思考の進化への新たな道筋となるでしょう。
また“有機的な変形ミラー”は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)で落合がテーマ事業プロデューサーを手がけるシグネチャーパビリオン「null²」の動く外装の実装実験を兼ねています。常に新奇性のある作品づくりに挑戦し続ける落合の最新の試みです。
・落合陽一 プロフィール
メディアアーティスト。1987年生まれ、2010年ごろより作家活動を始める。境界領域における物化や変換、質量への憧憬をモチーフに作品を展開。筑波大学准教授、デジタルハリウッド大学特任教授。2025年日本国際博覧会(大阪·関西万博)テーマ事業プロデューサー。
近年の主な展示として「おさなごころを、きみに(東京都現代美術館, 2020)」、「北九州未来創造芸術祭 ART for SDGs (北九州, 2021)」、「Ars Electronica(オーストリア, 2021)」、「遍在する身体 交錯する時空間(日下部民藝館, 2022)」、「晴れときどきライカ(ライカギャラリー東京·京都, 2023)」など多数。また「落合陽一×日本フィルプロジェクト」の演出など、さまざまな分野とのコラボレーションも手かげる。
- 落合陽一
落合陽一展 「ヌルの共鳴:計算機自然における空性の相互接続」概要
会期 2023年10月22日(日)~12月20日(水)
場所 清春芸術村 安藤忠雄/光の美術館
主催:清春芸術村
技術協力:株式会社乃村工藝社
機材提供・技術協力:株式会社セイビ堂(LED vision)
【開館時間】
10:00~17:00最終入館16:30
月曜閉館(祝日の場合は翌火曜)