かつて「座右宝」という画集がありました。東洋古美術を集めたもので建築及庭園、絵画、彫刻、3つのテーマごとに図版が収められており、その選は「暗夜行路」完結を控えた志賀直哉が役目を担っていました。作品選定の標準はただ志賀の主観のみ。序文・目録はあるものの解説は一切なく、黙々とその美意識にたって選ばれた作品図版が続いてゆきます。美術史家の観点を廃して、心を震い動す作品を選び、その作品に作者の創作への気持ちが如実に映ってる時に格別の喜びと興奮を感じると語った志賀の「主我的」編集は、個人の美意識を超えて『座右宝』を白樺派的美意識の結晶と言えるものにしたと詩人 大岡信は残しています。
本展は志賀直吉氏より寄贈を受けた1120点の志賀直哉所蔵作品を順次公開する企画展の第6回目として、「座右宝」彫刻の部より《観心寺 如意輪観音像》など数点とともに、志賀直哉の所蔵した美術品を展示しております。また、白樺美術館第二展示室では白樺派の愛したロダンの彫刻作品とジョルジュ・ルオーの作品からシャルル・ボードレールの詩へ寄せられた銅版画《悪の華》14点をご覧いただけます。「座右宝」に始まり、白樺派の美意識へと広がる本企画展をどうぞお楽しみいただけますと幸いです。
『座右宝』 ── 志賀直哉コレクションを中心としてⅥ
ZAUHOU — From Naoya Shiga Collection Ⅵ
2018年10月17日(水) – 2019年3月10日(日)